大判例

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大阪地方裁判所 昭和25年(ワ)1171号・昭25年(ワ)1173号 判決

原告 青木常

被告 黒田園逸

一、主  文

被告は原告に対し金四万六千一百八十二円及びこれに対する昭和二十五年五月十四日以降完済に至るまで年五分の割合による金員を支拂うべし。

訴訟費用は被告の負担とする。

この判決は原告が金一万五千円の担保を供するときは仮執行ができる。

二、事  実

原告は主文第一、第二項と同旨の判決並に担保を條件とする仮執行の宣言を求め、請求の原因として、

原告の息子青木忠は被告に対し(一)昭和二十四年二月八日煙草代として金三万一千円を返済期同月二十日の約束で貸付け、(二)同月五日金三万円を返済期同月十日の約束で貸付けたが、被告はその後右(一)の貸金に対し合計金一万四千八百十八円を返済したのみで、残金四万六千一百八十二円の支拂をしない。原告は昭和二十五年四月十八日青木忠より被告に対する右残債権をゆずりうけたものであつて、被告に対しては青木忠より同月二十日到達の書面で譲渡通知をなしている。よつて被告に対し右債権四万六千一百八十二円及びこれに対する訴状送達の翌日である昭和二十五年五月十四日以降完済に至るまで年五分の割合による遅延損害金の支拂を求めるものであると述べ、

被告主張の相殺の抗弁は時機におくれた防禦方法として却下を求め、仮にそうでないとしても同抗弁事実を否認すると述べた。被告訴訟代理人は「原告の請求を棄却する」との判決を求め、原告主張の請求原因事実は全部認める。抗弁として、被告は昭和二十三年二月二十七日原告に対し金一万円を返済期を定めずに貸付けているから、この債権をもつて本訴債権と対当額において相殺する旨述べた。

三、理  由

原告主張の請求原因事実はすべて被告の認めて爭わないところである。

ところで、被告が昭和二十三年二月二十七日原告に対し返済期の定めなく貸付けた金一万円の債権をもつて原告の本訴債権と対当額において相殺するとの抗弁が時機におくれた防禦方法として却下に値するか否につき考察するのに、昭和二十五年六月十四日の第一回口頭弁論期日には被告代理人より原告主張の請求原因事実をすべて認めた上右反対債権とは異る他の反対債権をもつて相殺するとの抗弁の提出があつたので、当裁判所としては同抗弁事実の釈明調整を求めるためだけにその後期日を延期すること四回、約五ケ月を経過した同年十一月十七日の第六回口頭弁論期日に及んで、同抗弁はすでに津山の裁判所にけい属せる青木忠と本件の被告間の別訴訟においても抗弁として主張されていることが判明したので、被告代理人は本訴より同抗弁を撤回すると共に更めて前記抗弁を主張するに至つたものであることが、本件記録並に弁論の趣旨に徴し認められ、右事実と本件事案殊に当面の抗弁事実が主張として極めて單純でなんら複雜な様相を帶びていない事実とを合せ考えるときは、岡山縣津山市居住の被告と大阪の被告代理人間の連絡の不便をいかに考慮に入れても、被告主張の前記抗弁の提出は被告代理人、否むしろ被告本人の重大な過失に基き時機におくれた防禦方法と認めるのが相当であり、これによつて訴訟の完結の遅延を來すと認め得るがゆえに、当裁判所は前記抗弁の提出を却下する。

從つて、原告の本訴請求は正当として認容し、訴訟費用の負担につき民事訴訟法第八十九條、仮執行の宣言につき同法第百九十六條を適用し、主文の通り判決する。

(裁判官 木下忠良)

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